
塗料の色は顔料で着ける
塗料の役割は「保護」「美観」「特別な機能」の三つだったね。塗料はその役割を果たすために「顔料」「樹脂」「添加剤」「溶媒」の四つの成分でできている。それぞれの成分が役割のために重要なんだ。
樹脂は「保護」のための塗膜を作る、溶剤は塗料を液体にして塗りやすくする、添加剤は塗料を使いやすくする調味料のような成分で、顔料は「美観」のために色を着ける成分だ。
今日はその顔料の話をするね。

染料と顔料はどう違う
僕たちの周りには色んな色がある。植物や動物などの生物や、建物や自動車、鮮やかな服やポスターなどみんな色を持っている。みんなに色をあげた伝説のスノードロップだって白という無彩色を持っている。
生物はもともと自分の色を持っている。人工物は誰かが色を付けてるんだね。人工物の着色に使う物を色材というんだけど、それには「染料」と「顔料」の二つがある。その違いは染料は水や溶剤に溶けるけど、顔料は溶けずに小さな粒子になって混ざっている。顔料も溶けているように見えるけどね。
染料は、水や溶剤に溶けて布や紙などの繊維の間に染み込んで色をつける。顔料は物の表面にくっついた樹脂に混ざって色をつけるんだ。塗料は水やシンナーが染み込まない金属やプラスチックにも色を着けられる。
顔料が塗料の着色剤として使われるのは、この性質と染料より紫外線や雨などに対抗する性能が良いからなんだ。(対候性が良いというね)

顔料の役割って何?
顔料のいちばんの役割は塗料に色を付けることなんだけど、その他にも塗料を増やす役割や錆を防ぐ役割もある。その役割を表にすると👇になるよ。
顔料の役割
種類 | 役割 | 備考 |
着色顔料 | 塗料に色を着ける | 無機顔料 自然の鉱物が多い、化合物もある 有機顔料 石油から作られる有機顔料が多い |
体質顔料 | 塗料を増やす 塗料の艶を消す | 炭酸カルシウム、硫酸バリウム、 水酸化ナトリウム |
錆止顔料 | 錆を防ぐ | 鉛系やクロムケ系、今は余り使われない |
骨 材 | 塗料の量を増やす | 硅砂など |

顔料の種類と特徴
顔料は、大きく無機顔料と有機顔料に分けられる。無機顔料は天然の鉱石や金属、化学反応によって作られる酸化物なんかがある。シルクロードの仏教壁画に使われているラピスラズリはウルトラマリンの原料なんだ。
さらに無機顔料は天然鉱物顔料と合成無機顔料がある。天然鉱物顔料は自然の鉱物や土からできている。土から作られる アンバー や シェンナ といった褐色顔料、 炭酸カルシウムやカオリン (粘土)がある。孔雀石やラピスラズリもそうだね。
合成無機顔料は、鉄や銅、鉛などの金属を化学反応させてつくられる。神社の鳥居に塗られている朱は弁柄という鉄の酸化物だよ。余談だけどベンガラの名前の由来はインドのベンガル地方から来ている。平安の遠い昔から交流があったんだね。
近年になると、コバルト青や黄鉛、チタン白が開発されてたくさん使用されるようになっている。その他に闇の中で光る蛍光顔料などの「特殊顔料」が開発されている。有機顔料は主に石油などから合成され、色が鮮やかなことが特徴だね。
顔料の種類を少し細かく説明すると👇になる。下記の表以外にもいっぱいあるので代表的なものだよ。
分類 | 種類(一部) | 性質 | |
無機顔料 | 天然鉱物顔料 | 赤土 黄土 黒鉛 胡粉 | 落ち着いた色調 色数が少ない 比較的安価 比重が大きい(重い) 耐候性に優れる |
合成無機顔料 | 紺青 亜鉛華 コバルト青 チタン白 | 👆天然鉱物顔料と同じ | |
有機顔料 | アルカリブルー フタロシアニンブルー キナクリンレッド イソインドレッド | 鮮やかな色調 色数も多い 高価なものもある 比重が小さい(軽い) 着色力に優れる | |
特殊顔料 | 蛍光顔料 金属粉顔料 パール顔料 | 光を蓄積して光る 塗料の中でキラキラ光る 塗料に柔らかい光沢を与える |

顔料は塗料以外でも使われる
顔料は、塗料だけでなく各種印刷インキやプラスチックの着色から、化粧品や織物、食品まで広く使われている。塗料では顔料のもつ性質によって使い方が変わってくる。無機顔料は耐候性(※光や風雨、温度変化に対する耐性)が良くて安いので、塗装面積が広くて、長期間、屋外に置かれる建築やコンテナなどに使われる。
有機顔料は着色力が優れていて発色が鮮やかなので、約6割が印刷インキ、約2割がプラスチックの着色剤、残りが塗料に使われる。自動車用塗料やショベルカーなどの建築機械、電車の塗料は鮮やかな色だけど屋外で長く使われる。
鮮やかな色をだすために有機顔料が使われる。自動車は色んな場所で使われるから塗膜は強い耐候性が必要になるんだ。アラビアの灼熱の砂漠やアラスカの極寒に耐えないといけない。想像するだけでも厳しさがわかるね。
塗料メーカーは顔料のテストを世界の色んな場所で行っている。顔料やその顔料使った塗料を試験片に塗って暴露試験(屋外で雨や日差しに晒すこと)をしている。樹脂も耐光性の良いものを開発しているよ。
顔料は塗料の着色以外に特殊な用途でも使われる。錆止めや増量などだね。体質顔料は光沢があって高い付着性があるので化粧品のフェイスパウダーにも使われている。塗料と化粧品が同じ顔料を使っているのはちょっと不思議な感じがするね。
このように顔料は色んな種類があって目的に応じて使われているんだよ。