建築用塗料 ラジカル制御って何だろう(その1)
ホルムズ海峡が大変
今、イラン戦争でホルムズ海峡の通行が困難になって原油の輸入量が減っているので、原油から作られる塗料やシンナーの価格が上がっています。価格に関係することは、イラン戦争の前の状況を前提としていることを考慮下さいね。
塗料にとってPV比は大事だよ
ラジカル制御を説明する前に塗料のPV比を説明させてね。前に塗料は顔料と樹脂とシンナーと添加剤で出来ているって説明したよね。その顔料の酸化チタンがラジカル制御の重要な要因になるんだ。
塗料は配合される顔料の量が重要だよ。それを考える目安がPV比と言われる比率なんだ。PV比は難しくいうとPVC(Pigment Volume Concentration)と言って塗膜に占める顔料の比率なんだ。PV比を低くくすると顔料分が少なくなって樹脂分の多い艶のある塗料になる。PV比を高くすると顔料分が多く樹脂分の少ない艶が無い塗料になるんだ。PV比は塗膜の性能に大きな影響を与えるよ。
なぜPV比が塗料の性能に影響するのか。ここで限界顔料体積濃度(CPVC)が重要になる。CPVCは、樹脂が、顔料の間を隙間なく埋めることができる限界点のことだ。顔料分がCPVCを超えると樹脂が足りなくなって塗膜に隙間(空隙)ができる。そうなると塗膜がもろく弱くなって実用性がなくなるんだ。PV比の影響をまとめるとこんな表になるよ。

樹脂は樹脂だけで塗膜になるけど顔料だけでは塗膜になれない。樹脂だけの塗料は色が着かないんだ。ニスがそうだ。たくさん塗っても下地が透ける。ニスは透けるのを狙った塗料だけどね。下地を隠して色を着けたいときは顔料が必要になる。隠蔽力がいるんだ。
- 隠蔽力 下地を隠す性能を言います。
PV比で塗料の性能が決まるよ
顔料をたくさん入れると隠蔽力は上がる。でも顔料を入れすぎると樹脂が少なくなって弱い塗膜になる。密着力も落ちるよ。そして顔料についてはそれ以外にも考えないといけないことがある。それは価格だよ。顔料は樹脂より価格が安いのでたくさん入れると塗料を安くできる。例えば、外壁塗料を設計するとき、PV比をCPVC(限界顔料体積濃度)ギリギリまで上げて「塗膜の隙間」を利用して白く見せることもできる。
ただし、その分、汚れやすくなったり、強度が落ちたりする。トレードオフの関係になるんだ。塗料メーカーは、新製品を開発するとき、必要な性能の維持と、コストを抑える顔料の配分量のバランスを考える。PV比やCPVCが目安になるんだ。
求める性能 ☓ 価格 = 樹脂量 ☓ 顔料の量、みたいな感じかな。塗料によってPV比は以下のように設計されているよ。
- 上塗りクリー :PVC 0%(顔料なし)
- 高光沢エナメル: PVC 15〜25%程度
- フラット(つや消し)塗料: PVC 50〜75%程度
- 錆止めプライマー: PVC 30〜50%程度(防錆顔料を密集させるため)
ここで顔料のことをもう一度思い出してみよう。顔料は着色顔料と体質顔料、機能性顔料があったね。体質顔料は塗料の隠蔽性を上げたり塗料の量を増やして価格を下げる役目をする。この体質顔料に使われるのが酸化チタンや炭酸カルシウムなんだ。

ラジカル制御の話をするよ
では「ラジカル制御」の説明に移るよ。「ラジカル制御」というのは「ラジカル」の発生を抑える機能のことでフッ素やアクリルといった樹脂の技術とは別なんだ。そのラジカルの原因は酸化チタンにあるんだ。酸化チタンは塗料になくてはならないものだけど悪さもするんだよ。
酸化チタンは、強い紫外線を浴びるとラジカルという破壊的なエネルギーを出す性質を持っている。このエネルギーは樹脂の架橋構造を切断して塗膜を壊すんだ。塗膜はこのダークサイトのエネルギーを浴び続けると白化して粉を吹いてしまう。この現象をチョーキングというんだ。
- チョーキング現象 壁を触ると手に白い粉がつくのは、ラジカルによって樹脂が壊され、 顔料がむき出しになった状態をいいます。
そうだったら酸化チタンを使わなければ良いじゃない、となるけどそうもいかないんだよ。隠蔽性の良さや価格のことを考えればどうしても必要になる。だったらラジカルを抑えればいいよねとなった。ラジカルを抑制できれば塗膜の寿命を伸ばせるはずだ、でラジカル制御塗料が誕生したんだ。
ラジカル制御の技術は二つあるよ。
①緻密ホワイトゾル(バリア層) 酸化チタンの表面を特殊な成分(シリカやアルミナなど)でコーティングしラジカルが外に出ないよう閉じ込める。
②ラジカル捕捉剤(HALS) 塗料に「HALS(ハルス)」という成分を配合する。HALSはバリアを突き抜けて発生したラジカルを捕まえて無害化する。人の身体の白血球のような役割をするんだね。

ラジカル制御塗料の樹脂はシリコン系樹脂が多いよ
この技術は色んな樹脂系と組み合わせて塗膜の耐久性を伸ばせるんだ。どんな樹脂系とも組み合わせられるけど、シリコン樹脂系との組わせが一番コストパフォーマンスが良いとされているよ。
もともとシリコン樹脂系は耐久性が良いんだ。それにラジカル制御を加えると一般的なシリコン塗料より耐久性が2〜3年長く(約12〜15年)なる。そのうえ価格はそれほど変わらない。コスパ最高。だから建築塗料ではシリコン樹脂系 + ラジカル制御機能の組み合わせが主流になっているよ。
ラジカル制御塗料は、樹脂の種類とは別に紫外線による劣化をブロックする特殊な酸化チタン(白顔料)と補佐役を使った高コスパな次世代塗料といえるね。現在は更に進んで「アクリル」「シリコン」「フッ素」といった樹脂系に関係なくラジカル制御技術を組み込むのがスタンダードになりつつあるんだよ。

デメリットもあるよ
「ラジカル制御形塗料」はコスパ最強の部類に入るけどデメリットや注意点もあるよ。
①濃い色(ダークカラー)では効果が薄い。
これが最大の弱点かもしれないね。ラジカル制御は塗料に含まれる酸化チタン(白顔料)」が紫外線を受けて発生するラジカルを抑える技術だから、ラジカルが発生しないと効果もないとなるよね。
- 淡い色(白、アイボリー、ベージュなど)は酸化チタンを大量に使うためラジカル制御の効果が最大限に発揮される。
- 濃い色(黒、紺、濃い茶色など)はそもそも白顔料をほとんど使わない(黒や青の顔料がメイン)ので「制御すべきラジカル」が発生しにくいから効果も少ない。
その結果、 濃い色の塗料の場合、普通のシリコン塗料と耐久性が変わらなくなってしまう。
②登場から日が浅く、30年以上の実績がないんだ
ラジカル制御塗料は、日本ペイントが「パーフェクトトップ」を2012年に発売したのが最初でまだ13年くらいしか経ってない。だから実際の自然の状況で20年から30年のデータがないんだ。フッ素やポリウレタンなどの樹脂系はもう長い実績があるけどね。でも最近の評価技術は進んでいるから、大きな不具合は起らないと思うけどね、
③樹脂のグレードアップではないよ
ラジカル制御は、あくまで酸化チタンから発生するラジカルを抑える機能なんだよ。だからベースとなる樹脂(シリコンやアクリル)そのものの耐久性を向上させるわけではないんだね。そのため、フッ素樹脂塗料や無機塗料のような「樹脂そのものが最強」な塗料に負けるんだね。
④「魔法の塗料」のように誇張されることがあるよ
これは塗料の持つ性能自体のデメリットではないけど、売りやすい製品だから起こる現象がある。、塗装業者や販売業者の一部の人達が「フッ素と同じくらい持ちますよ!」「これなら20年メンテナンス不要です!」過剰なセールストークを言う事があるらしいんだ。あくまでシリコンより少し長持ち(12〜15年程度)くらいを忘れてはいけないんだ。
デメリットと塗料を選ぶときの考え方
自宅の外壁の色味やメンテナンスを考えるときは、こんな風に考えたらどうかな、を表にしてみたよ。あくまでも参考なので、それを決めるのはあなたです。

まとめだよ
ラジカル制御についてまとめるとこんな感じだね。
- 塗料中の酸化チタンは紫外線を浴びるとラジカルというエネルギーを出す。
- ラジカルは塗膜の樹脂を破壊して劣化させる。
- ラジカル制御はラジカルというエネルギーを抑制する技術である。
- 抑制する技術は、ラジカルの閉じ込めとHALSによる吸収の二つである。
- 樹脂系とは別の技術だ。
- 色によって効果が分かれる。



