これまで塗料の説明をしてきたので、この辺りで塗料の塗り方を説明するね。塗料を塗る事を塗装と言います。殆どの塗料は液体や粉体なので塗るときに道具や機械がいるんだ。それに必要な機能がいくつかあるよ。

一つ目は綺麗に塗れること、これは当然だね。せっかく塗るんだから綺麗にしたいからね。
二つ目は効率的に塗れること。塗料の価格はけっこう高いから、少ない量でたくさんの場所や物が塗れたら嬉しい。塗料メーカーは塗料がたくさん使われるのが良いけど、お客さんに喜んでもらいたいので効率的な塗料を研究しているんだ。塗装機器のメーカー同じだよ。
三つ目は環境に優しいこと。塗料は化学製品が含まれているから、被塗物(塗料を塗る相手)以外に飛び散らないようにしないといけない。被塗物だけに塗れるほうが効率的でもある。

建築の塗装に使う道具や機器
世界で最初に塗装をしたのは、アルタミラやラスコーの洞窟、アフリカの二ジェール砂漠の岸壁にに絵を描いた人たちだ。この人たちは手に塗料を着けて塗っていた。人類最初の塗装道具は人間の手だったんだ。今でも小さな子供は絵の具を手で塗ってるけどね。
次に使われだしたのは刷毛だ。これはみんながよく知ってる塗装道具で今もよく使われている。動物の毛や植物の繊維を束ねたものが一般的だね。習字をする筆、お化粧に使う刷毛なんかも一緒だ。毛の間に塗料を貯めるから広い範囲を均一に塗ることができる。塗り方に技術がいるので、塗る人の腕によって仕上がりや使用料に差がでるよ。
刷毛の種類は、丸刷毛、平刷毛、太さや大きさが違うものなど沢山ある。刷毛メーカーさんも多い。外壁塗装のプロは大塚刷毛さんや好川産業さんの刷毛を使っていることが多い。どちらも歴史が長いから色々なノウハウが蓄積されて使いやすい刷毛を作ってるんだ。

建築物の塗装でよくつかわれる道具にローラーがある。柄の先に切り分けるバームクーヘンのようなスポンジのローラーを付けたもので、スポンジに塗料を染み込ませて塗るんだ。ローラーが輸入されるまでは刷毛が一般的だったんだけど、アメリカから渡ってくると一挙に普及した。長い柄をつければ高い所も塗れるし、ローラーの表面は均一なので、塗った跡に刷毛のような筋の模様が残らない。簡単に塗装できるんだ。ローラーにも色んな種類があるよ。
今は建築現場であまり使われなくなったけれどスプレーも使われる。スプレーは塗料を空気やガスの圧力で小さなノズルの先端から霧状にして噴射して塗る機械だ。殺虫剤のスプレーをもう少し強力にした感じ。塗料が細かい粒になるので均一に綺麗に塗れる。でも被塗物以外の所や跳ね返った塗料が飛び散るので屋外ではあまり使われなくなった。建築用の塗装で使われるのは、刷毛、ローラー、スプレーが代表的といえるね。

工業用製品の塗装機器
自動車やエアコンなどの工業用製品の工場ではスプレーがよく使われている。スプレーは液体塗料でも粉体塗料でも使えるし、工場だったら飛び散った塗料を回収できるからね。塗料の粒に静電気を帯びさせて被塗物に着きやすくすることもできる。塗料の粒を小さくすることで自動車の外観のようなツルツルの肌にできるんだ。スプレーも用途によって色んな種類があって画家が使うエアブラシなんかも仲間だよ。
工業用製品の塗装は、製品に応じた塗り方が必要なので色んな塗装機器や塗装方法がある。自動車は塗膜が何層にも重なってるんだけど、一番下の層は(下塗り)電着塗装と言って大きなお風呂のような槽にボディを浸して塗装する。浸かったボディにプラスと塗料にマイナスの電気を流すと、マイナスの塗料がプラスのボディに引かれてくっつくんだ。

塗料の中に浸かっているから隅々まで塗れて錆止め効果が抜群の塗膜になるんだ。自動車は極寒のシベリアから暑熱のアフリカまで過酷な環境で使われるから強い塗膜が必要になる。電着塗装の次は、中塗塗装、上塗塗装をされて仕上がりになる、装電着塗装は自動車以外でも使われていて、家の窓のアルミサッシは電着塗装されてるものが多いよ。
ダイワハウスや積水ハウスのツーバイフォー建築の外壁は、工場であらかじめパネルに塗装されているんだ。外壁にする板をスプレーやローラーカーテンコーターで塗装する。蒲鉾板のような形の大きな板がコンベアで流れてきて、それに塗料をスプレーで吹き付けたりローラー塗ったりする。カーテンコーターといって塗料を上から滝のように流してその中をくぐらしてする塗装もある。パーティのチョコレートホンデュみたいな感じかな。スプレー以外は塗料が飛び散らないので使用料が少なくてすむんだ。塗装効率が良いんだ。
建築塗装で使われる道具の基本は、刷毛、ローラー、スプレーだけど、工業用製品の塗装では製品の形状と必要な性能によって色んな機器がある。それについてはおいおい説明するね。
