
塗料の製造はけっこう難しい
塗料は樹脂と顔料と溶媒(シンナーや水)からできている。今日はその原料を使って塗料がどのように作られるか説明するね。塗料を作るのは簡単そうだけどけっこう難しい。原料を容器に入れて混ぜたら出来上がりではないんだよ。
1.綺麗な塗膜にするには、樹脂や顔料が小さくて均一でないといけない
2.ある程度の期間、保管しても使えないといけない
塗料は、塗膜になったとき、樹脂と顔料が溶媒のなかに均一に混ざっていないと色ムラがでたり、肌が滑らかでなかったり、求められる性能がでないことがある。だから樹脂や顔料を小さくする技術が必要になるんだ。この細かくする技術を分散と言うんだけど単に細かくするだけじゃないんだよ。
物質の粒子は小さくなる程、お互いが集まろうとする性質があるんだ、塗料の粒子も同じで細かくするとくっついて大きくなろうとする。それを防ぐようにするがけっこう難しい。それは塗料メーカーの核心的技術になるんだ。

分散された塗料の粒子は溶剤や水にこんな風に混ざっているんだ。粒子は自動車に使われる塗料で10ミクロンくらい、建築用の塗料で10 ミクロンから 40 ミクロンくらいになる。 1ミクロンは、1000分の1ミリだから隨分小さいね。
塗料は完成すると工場やお客さんで一定期間は保管される。当たり前だけどその後でも使えないといけない。その使えるだいたい6ヶ月くらいになるよ。
沈殿
ここで、ちょっと話は変るけれどお味噌汁を思いだしてほしい。お母さんがお椀によそってくれたお味噌汁を暫く置いておくと、具やお味噌がお椀の底に沈んでしまう。これは沈殿と言う現象だけど塗料でも同じことが起きるんだ。

塗料も作られた直後は塗料粒子が溶媒のなかに浮いている。時間が経つにつれて塗料の粒子は徐々に沈殿して行って、沈殿した粒子は固まってしまう、そうなるとその塗料はもう使えない。沈殿は重力がある限り起こるから防ぎようがない。塗料メーカーは粒子を沈殿しにくくしたり沈殿した粒子を固まり難くして、かき混ぜると元に戻るように工夫するんだ。その目安が品質保証期限になる。
攪拌 品質保証期限内でも塗料粒子は沈殿する。その塗料をそのまま使うと上澄みで塗装することになって、色が違ったり性能が出なかったりするんだ。そうならないように、使う前に良くかき混ぜて元の状態に戻すことが重要になる。この混ぜることを攪拌と言うよ。
塗料の製造工程
塗料を作る工程はだいたい以下のような風だね。

前練(プレミックス)まず塗料の原料を一つのタンクに入れて良く混ぜるんだ。
分散 その混ぜ合わせた原料をミルという分散機にいれてより細かい粒子にする。色んな分散機があるけど良く使われるにものにボールミルがある。原料とセラミックビーズをコンクリートミキサーのような機械に入れてグルグル回し続けると樹脂や顔料がビーズに挟まれてどんどん小さくなるんだ。
調合・調色 分散が終わると塗料ごとに決められた他の原材料(添加剤)を加える。添加剤によって塗料の機能性は大きく変化するんだ。添加剤を加えた原料に原色を加えて色を調整することもあるね。
ろ過・充填 調色が終わると塗料がほぼ完成だ。できた塗料をろ過して不要なものを取り除いて、色んな検査をして合格だったら容器に充填する。塗料の完成だね。

調色という作り方
プレミックスから充填までの工程は、工場では普通なんだけど制約もあるんだ。
1.大きな設備が必要である。
2.大量の塗料ができてしまう(1t以上)
でも、お客さんは16キロを3缶とか4キロを1缶など少量を必要とする場合がある。そこで考えられたのが、原色である塗料を何色が作っておいて、それを混ぜ合わせてお客さんの必要とする少量の塗料を作る方法なんだ。
調色
原色は塗料として完成しているから性能は確保されている。後はそれを混ぜるだけだから、絵具を混ぜて色を作るイメージになる。 最近はコンピューターを使って色を合わせる調色装置があるから簡単に調色できる。コンピューターは色見本を測色して、同じ色の塗料を作るのにどの原色を幾らくらいの量を混ぜれば良いかを教えてくれて量まではかってくれるんだ

このシステムをコンピューターカラーマッチングシステムというんだけど、最後の検査は人がする。色を判定する能力は人間の目が機械より優れているんだ。人の目って凄いんだね。
建築用塗料は、この調色システムのおかげで、販売店がメーカーの工場で作られた原色を使って必要な量の製品をお客様に届けられるようになった。自動車や電機製品の塗料は工場で作られるけれど原色を使った調色の方法は使われている。